睡眠障害は睡眠に関わる病気の総称を指します。例えば、寝つけにくくなることや眠れなくなる不眠症や逆に十分に眠っているにも関わらず、日中眠くなる過眠症、睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます。ただ、一般的に耳にするのは不眠症で、日本では5人に1人が不眠症を抱えているとされております(国立精神・神経医療研究センター)。また、病気をお持ちであったり、その治療による不眠症が併発することもあります。そんな不眠症ですが、精神的緊張や不安から起こる不眠を「1次的不眠症」、身体疾患や精神疾患、薬物の摂取や中断に伴って起こる不眠を「2次的不眠症」に分けられます(以下に列挙)。
精神疾患:うつ病や統合失調症や双極性障害、不安症など
脳器質性疾患(脳の構造に変化が生じて起こる疾患):パーキンソン病やアルツハイマー病、脳血管障害や脳腫瘍など
身体疾患:慢性閉塞性肺疾患(気管支や肺の障害のために呼吸がしにくくなる状態)や、胃や十二指腸に潰瘍ができる状態である「消化性潰瘍」など
身体疾患治療に用いる薬剤:レセルピンやメチルドパ(降圧薬)、レボドパ(抗パーキンソン病薬)など
なお不眠症の大きな問題は、その発症が引っ越しや旅先での生活環境の変化や翌日にストレスがかかる仕事やテストなどありふれたことがきっかけで発症することです。多くの場合は短期的に自然と治りますが、症状が週に3日以上あり、それが3カ月以上続く場合は慢性不眠症と診断されます。
なお、治療方法は「薬物療法」と「非薬物療法」に分けられ、「不眠症の治療では、まず不眠の原因を診断し、薬物療法以外の治療を行うことが一般的です。しかし、眠れないストレスや不安から多くの方は医師に「薬物療法」を希望します。これは安易な決断とは言えませんが、お薬で治す方法の大変さや欠点も知っていただければ嬉しいです。今回2つ知っていただきたいのは
不眠症の完治には時間がかかる場合が多い
長期的な投薬治療の健康被害がある
実は服用して眠れないことに関してはすぐに解決しますが、完全にお薬が要らなくなるまでに時間がかかります。ここではベンゾジアゼピン系睡眠薬による治療に問題について解説します。このお薬は脳の活動(興奮)を抑えるGABAと呼ばれる伝達物質の放出を助けることで眠りやすくします。しかし、突然服用をやめるとより強い不眠症に悩まされます。これを「反跳性不眠」と言います。原理としてはお薬で脳の活動を抑える力を上げているだけなので、服用をやめれば元々あるGABAの放出する力も弱るため、より眠れなくなります。そのため、お薬による睡眠のコントロールはとても難しいのです。また、長期的な服用は高齢者の場合、アルツハイマー型認知症が発症する確率が40~50%に上がります。これは、お薬の使用量が多く、使用歴が長いほどアルツハイマー型認知症になるリスクが高くなります(フランスINSERMのSophie Billioti de Gage氏らが、BMJ誌で掲載)。また、医師のチーム研究で、平均年齢54歳の成人1万500人以上と、いずれの薬も飲んでいない同世代の成人2万3600人以上の2年6か月分の医療記録を比較した結果、年間18回~132回分の睡眠薬を飲んだ人の死亡率は服用していない人の4倍、年間18回分未満でも3倍以上でした。(Hypnotics' association with mortality or cancer: a matched cohort study)
現在はお薬も進歩し、副作用が少なく依存性も以前のお薬よりも減少したものも開発されております。その中でも1つ紹介すると「オレキシン受容体拮抗薬」です。このお薬は先ほどの原理と逆で、目が覚める力を直接弱めます。そのため、入眠しやすく、依存性も少ないことからこちらのお薬を処方されることが増えているそうです。まだお薬の種類が少ないですが、不眠症で悩む方の救世主になると期待されています。
以上が睡眠障害の科学です。拙く、長々とした文章で申し訳ありません。もし、睡眠障害で悩んでいる方にこの記事が目に止まれば嬉しく思います。あと、睡眠障害に関するリンクを貼っておきますのでよかったら目を通してみてください。
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